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1.M&A出資案件への対応2.財務面から見た海外経営、リスク管理3.海外子会社の経営リスク4.中国市場について5.グローバル展開の道筋

3、海外子会社の経営リスク

●保険でカバーできるリスク、できないリスク

写真また、海外金融子会社の経営リスクでは、保険でカバーできるものとできないものがあるので、その仕分けをしなければならない。

例えば、今回のBPのメキシコ湾原油流出事故については、BPは保険を買っていないと報道されている。しかし、実は彼らはキャプティブ・インシュランス・カンパニーを持っていて、資本金は7,000億円もある。全世界のBPの保険はそこに集まっている。ただし、今回のような海洋汚染の問題については、700億円が上限になっており、その分BPは子会社から取り上げられる。彼らは、年間の配当が1兆円の巨大企業である。恐らく税務上のキャプティブはそのまま残して、ロスはロスで本社が取っていくのだろう。三井物産やアナコンダについては、これからの話だと思うが、ただ今、なぜBPが保険を全然かけていないということがわかっているのだろうか。保険会社は引き受けているのではないかと疑われており、「引き受けていない」と言わないと、自社が売りあびせられてしまう。だから、みんなわかってしまう。大して保険はかかっていない。あれはもう、私はビジネス・リスクの世界ではないと思う。2兆、3兆になると、引き受け能力は民間の保険会社にはない。キャプティブで行っても、7,000億のキャプティブ・インシュランス・カンパニーで、10%、700億までという話になるので、結局、事業リスクになってしまう。環境汚染の問題なども、どこまでそれをヘッジしていくのか、いなかは、大きな問題だと思う。

賄賂については、連邦海外腐敗行為防止法やSEC経理規定により米国上場企業のリスクの一つだ。中国のリスクもこうしたところにもある。

●派遣職員というグローバル企業共通の悩み

派遣職員の問題は、恐らくグローバル企業共通の最大の悩みであろう。住友銀行当時、海外に1人派遣すると、本社では少なくとも2人の何時でも交代できる補充要員が必要だと考えていた。自衛隊の人から、PKOに1人出すと、3人日本に補充要員が必要だと聞いたことがあるから、本当は3人必要なのかもしれない。補充要員が不足すると、私のように、17年も海外にいなければならなくなる。

さらに現地化の問題がある。楽天の三木谷社長など社内公用語を英語にするという会社も現れているが、英語のことを考えると結構派遣職員は問題があると思うし、真の解決は難しいのではないか。私は住友銀行時代、アメリカに派遣職員として送られ、現地社員を使っていた経験がある。今、逆にアメリカから派遣されてきた職員の下に多くの日本人がいる形になっている。こうした関係は、リーガル(&監査)リスクなど非常に難しい面がある。

富士火災は、私が来て、実は海外からほぼ全面撤退することを決めた。これはチャーティスの中に入るからということではなく、人がいないからだ。海外にきちんと保険業務をやってくれる人間を1人出すときに、仮に本社に同じような人間が2名から3名必要なら、とても10名単位では出せない。そのため、海外畑である私が、海外業務を禁じ手にしている。中国を含めて、経営資源の限界を感じて、できないだろうと思っている。

●オフショアリングのリスク

オフショアリングは、アリコの個人情報漏えいというリスクを引き起こした。私はソニーにいた当時、GEなどはたくさんやっておられるが、大連のオフショアリングに懐疑的だった。AIGに移っても「大丈夫か、慎重に」と言っていたら、案の定こういう事態を招いた。やはり入念にチェックしないと、特に個人情報は難しい問題が残ると思う。

●中国の売上債権の回収

中国では売上債権の回収が非常に困難なので、例えばソニーの携帯の売上債権は、ほとんどキャッシュ・オン・デリバリー(現金取引)になっていた。一方、モトローラは売掛金管理をうまくやっていた。AIUと組んで一緒に回収チームをつくり、最初から保険でカバーしている。これは1つの参考になるかもしれない。

 

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